reservoir-drawing’s blog

徒然に、日々や絵など。

言葉をつむぐということ

どうも、俺です。

文章を書くという事は、編み物のようだなと感じる。
字を一字づつ編みこむようにつなげる事で、ひとつの言葉となり
言葉を更に編みこんで、文章になる。

きっと、文を見返す作業というのは
網目が飛んでいないかのチェックに似ているんだろうね。

丁寧に毛糸を編みこむように、言葉を紡いでいきたいなと思う。

余韻

映画を観たあと

少しぼんやりしながら

映画館から出て、放り出される日常の景色
すぐにそれを受け入れられず、整理もできず
少し立ちすくむような感じが好きだ

まだ意識がスクリーンの中
でも体だけ、日常の中に

粒子の粗いフィルム
大好きだった、あのシーン

いつかまたあの感覚を味わいにいこう。


ある日の参観日、娘にあてて

校内の階段を上がり、君がいる教室を目指す
ぼくが教室にさしかかると、君は目を輝かせて手を振ってくれたね
国語の授業、君はとてもはりきって発表していたね。

前の参観のときと比べると
小三になった君の机や椅子は、少し小さくなったように思えたよ
君は日々、成長しているのだね。

前より少し大きくなった背中を、教室の後ろのほうで
ぼくはしっかり見つめていたよ

そして君のこれからに思いをはせたんだ

ぼくは、君が素敵なレディになれるよう
君が人に優しく、快活で、賢くあるよう
困難に立ち向かい、自分の道を拓けるよう

 

きみもいつかは、誰かにきっと恋をするのだろう
誰かを愛するというのは、とても素敵なことなんだ。

何万人も、何億人もいる「ただの」人
その人と思い、ふれあうことが出来たら
二人はお互いを必要とし合うんだ。

君が恋した人は、
その瞬間、きみにとって世界で唯一の存在になるだろう
恋に落ち、その人を想うことは、とても素敵なことなんだ。

僕は君が、いろんな事をかんがえ

いろんな人とであい、誰かを愛したり、わかれたり、また愛したり

そうして歩いていく道を、出来の悪いパパなりに照らしていきたいと思っている。

天国のママのぶんも、しっかりとね。

娘よ、ぼくはきみを愛しています。

時のもたらすもの

生きていれば、ひどく打ちのめされ
時に大きな痛みや、形容しがたい悲しみをかかえる事だってある

問題は、その痛みや悲しみをどう乗り越えるかだけど
たちどころに癒えるなんて事は少なくて、
どうにかやり過ごす事も必要になる

ある日のこと

俺は、駅前の道を重い足取りで歩いていた

その時の俺は、とんでもない喪失を被っていた時期だった

そう、妻を亡くしてほんの数週間だった

どこでどうしたもんか
これからどう俺は生きればいい?
・・・・そんな心持ちの俺の目の前

小さな子供がはしゃいでいる

俺は、その無邪気な様子を機械的に目で追う

それは、可愛さを感じる、とかそういった感情ではなく
ただ動き回る「それ」に目が向いているだけに過ぎない

その子が勢いあまって転ぶ

そのとき突然に、俺の視界を支配していたグレーのフィルターが
本来の色で俺に景色をうつす

無機質な感情に、血が通う

俺は手を差し出し、その子を起こしていた
そして頭をなでた後、服の埃を払い
その子に駆け寄る母親に向け、そっと背中を押した

「さ、ママがまってるぜ」

その刹那だけは、俺は痛みを棚上げし、
ちっちゃな子のことだけを、考えられた

しばらくして、やっぱ痛みや喪失感は戻ってきてしまったのだけれど

それでも少し、ほんの僅か。
俺の痛みは薄らいでいたんだと思う
だからさ、曲りなりにもなんとか己を制御できている「今」があるんじゃないかって

追い立てられるように、何かに打ち込んだりとか
とっさに誰かへと注ぐエネルギーって
回りまわって、自分を癒すのだろう。

そう俺は考えるんだ。


時間は、残酷な側面があるけど
優しい側面もあるんだろうね

めくるめく惣菜売り場

どうも、俺です

昨晩遅く、例によって仕事帰りに立ち寄るいつものスーパー。

そこは、めくるめく魅惑の赤いシールをつけた
あの娘(刺身)やあの娘(惣菜)たちが

「んふ♪サービス価格よん♪」

と、俺をいつもしどけなく、そして悩ましく誘うのである。

そんな魅惑の空間の一角、揚げ物系の売り場で足を止める。

コロッケ類が種類ごとに並んでおり、
カニクリームは僅かに一個

「おお!僕を待っていてくれたんだね、ハニー」

心の中でつぶやくと、迷わず手を伸ばす。

Mission complete...

程よい達成感に浸りつつ
俺は他のコロッケ類を一瞥する。

マジックで個別に手書きされたコロッケが入った透明パック

かぼちゃには、当然だが「かぼちゃ」と。
そして、俺の手にした愛しいカニクリームには「カニ」と。

しかし、売り場の奥に
ただ一文字、漢字で力強く「男」とだけ書かれた四つのコロッケ

男??

店員さんアレなの?
この中には、なんかこう、、、南米原産のビンビンになるアレとか
東南アジアで、僅かに採取できるソレとか
食いつくと離れない系な、
あのカメさんの「なにか」が配合されてたりするの??

これ食ったら、きっとあれだ

昼間のパパは~ちょっと違う~♪
夜中のパパは~♪もっと違う~♪
夜中のパパは~♪男だぜ~♪(ゆ、許して清志郎

的にビンビンな事に・・・

それともアレなの?
ねじり鉢巻で、ふんどし一丁(でもマスク着用)の惣菜屋さんの若い衆が
掛け声も勇ましく、はねる油にも負けず揚げたとでもいうの?

「パン粉まいておくれ!パン粉まいておくれ!!!」

惣菜工場をとりまく、沿道の観光客からの声援!!
そして飛び散る卵の汁!!

俺が、ああなるほど、男爵イモのポテトコロッケなのねと納得するのは
会計を終え、もやもやと、悶々とスーパーを後にした数歩目だった。

店員さんのおばちゃん・・・・狙ったな(笑)

在る朝、乗客たちの、それぞれの事情

土曜の朝、8時前

俺は、会社へ向かうため
都営大江戸線の某駅から地下鉄に乗り込んだ。

平日とはうって変わり、
人のまばらな車内の席に、パーカーのフードを深くかぶり
うつむいて眠る若い女性が目に飛び込んでくる。
フードの奥から、鮮やかな赤い唇が覗く。

この路線は、六本木にも接続しており、
繁華街で夜を明かした連中が、電車内で力尽き眠るのは
土日の朝方、よく車内で目にする光景だ。

彼女の向かいの席には、これから行楽地に向かうのだろう、
こどもを連れた親子連れが並んで座っている。

幼いこどもは、目的地に着くのが待ちきれない様子で、
楽しげに目を輝かせながら、母親にじゃれついている。

深夜から明け方にかけ、エネルギーを発散させた後
精根尽きて眠る若い女性がかもしだす、気だるげな雰囲気

対岸の座席で、ありあまるエネルギーを放出すべく
目的地へ向かう親子の、生気に満ちた快活さ。

そして会社に向かう俺。

あらゆる年代のあらゆる事情を飲み込み、ないまぜにして
都市の皮膚の下を、毛細血管のように地下鉄は走る。

チューブ

ロンドンでは、地下鉄をこう呼ぶのらしい。