reservoir-drawing’s blog

徒然に、日々や絵など。

在る朝、乗客たちの、それぞれの事情

土曜の朝、8時前

俺は、会社へ向かうため
都営大江戸線の某駅から地下鉄に乗り込んだ。

平日とはうって変わり、
人のまばらな車内の席に、パーカーのフードを深くかぶり
うつむいて眠る若い女性が目に飛び込んでくる。
フードの奥から、鮮やかな赤い唇が覗く。

この路線は、六本木にも接続しており、
繁華街で夜を明かした連中が、電車内で力尽き眠るのは
土日の朝方、よく車内で目にする光景だ。

彼女の向かいの席には、これから行楽地に向かうのだろう、
こどもを連れた親子連れが並んで座っている。

幼いこどもは、目的地に着くのが待ちきれない様子で、
楽しげに目を輝かせながら、母親にじゃれついている。

深夜から明け方にかけ、エネルギーを発散させた後
精根尽きて眠る若い女性がかもしだす、気だるげな雰囲気

対岸の座席で、ありあまるエネルギーを放出すべく
目的地へ向かう親子の、生気に満ちた快活さ。

そして会社に向かう俺。

あらゆる年代のあらゆる事情を飲み込み、ないまぜにして
都市の皮膚の下を、毛細血管のように地下鉄は走る。

チューブ

ロンドンでは、地下鉄をこう呼ぶのらしい。